禁術と呼ばれる術

ジャンル:RPG
プラットフォーム:Win95/98 (RPGツクール95作品)
作者:ガソン・ワホさん
種別:フリーソフトウェア
ダウンロード先:ベクター

ゲームの内容:修二郎は、気が付くと記憶を失い迷宮の中に倒れていた。 名前以外の記憶を失っているが、止まっていても仕方がないと動き始める。 魔物を退治しつつ、道すがらバルドゥス、神楽といった自分と同じく記憶喪失になった人と出会い、 彼らと一緒に失われた記憶を求めて封印迷宮に挑んでいく。探索を続けるうちに、禁術と 呼ばれる術の存在を知り、それに少しずつ関わっていくことになる…。


結論から先に申し上げますが

このゲームはかなりお勧めです。どこがお勧めかといいますと、 ツクール、それも95で 「戦闘が楽しい長編RPG」を創り出してしまったこと、そこが見事です。 オートでは勝てない戦闘のバランスで、難易度が結構高い気もします。 しかし、負けたときに「システムが不条理だから」ではなく、 「自分の戦略が至らないからだ」と素直に感じさせてくれたのには とても感激しました。実際、レベルと装備さえ十分であれば 頭を使って勝てることが出来ます。まさに「名作は負けたとき自分のせいだと 思えるものだ」というセオリーに則っています。
もちろん、敵の弱点や強い部分をきちんと知る必要があるので、何度か チャレンジする必要があるでしょう。よって、やや上級者向けとなります。

また、このゲームはシステマティックに出来ています。 特に、画面上の敵が見えていて、 レベルE〜AおよびSというように敵の強さのランクが見えるのが 分かりやすくていいです。 一般的にシステマティックにするのはうまくやらないと世界観を損ねたり、 システムが複雑になったりするのですが、このゲームは非常に分かりやすく、 ゲームの特徴として前面に出すことに成功しています。
見た目で敵の強さが分かる。その上で、戦いたい敵とは戦って、 逃げたい敵からは逃げられるようになっているので、 敵から逃げまくって強い武器を先に手に入れてしまう、というのも よいといえます。
...そう、武器や防具、強い装備や魔法を手に入れていくのが楽しいのです!

武器、防具、魔法を手に入れるのが楽しい

存在の書、古墳への道(海が通れる)などなど、凄いフィーチャーが あります。要するに、イベントに関係のない隠しダンジョンが多数あり、 もちろん行かなくてもいいのですが、行った方が強い魔法や装備が 手に入り、しかも「嬉しい」と実感できてしまうのです!
そう、この「嬉しい」がポイントなのです!
実はこのゲームを始める前は「ツクールのRPGで戦闘があるのは ちと食傷気味」なんて思っていたのだが、このゲームは全く違った。 トラップを乗り越えて武器防具を手に入れたときの感動の気持ち、 これが燃え上がってきました。久々ですよ、この気持ち。

特筆すべきは魔法も、戦闘で勝つことによって覚えられるものが多いです。 これがあるので、レベルアップ以外でも魔法が覚えられる、すなわち、 必ずしもレベルを高くまで上げなくても勝てる、ということです。 低レベルクリア、少ない装備クリアなんていう楽しみ方も出来るのではないでしょうか。 そう、やりこみはかなり出来そうです。 この章の冒頭で述べた「存在の書」これには全てのアイテムのありかが載っています。 アイテムのコンプリートだけでも長く楽しめそうです。

「数値」を考慮し尽くしたバランス調整

以前、僕は「ツクール95では戦闘が面白いゲームを作るのは難しい」と 思っていました。しかし、このゲームでその考えは覆されました。
僕がRPGツクール95で面白いゲームが作れないと考えていた理由の一つは、 僕は「数値の制限」だと 考えていました。
ツクール95では、各キャラクタの特性値は100までしか上げられません。 武器や防具で攻撃防御は上げられても、素早さは100までです。 特に、素早さによって命中率回避率が大きく影響するのに、敵の素早さを 何も考えずに400とかしてしまったら、非常につらいことになります。 よって、バランス調整はそういう点も考慮してしっかり行わなければなりません。 それに、魔法のダメージについても同じです。 魔法防御力に関する説明がツクール95のマニュアルになかったため (魔法防御力は、数値だけ減るわけではなく、パーセンテージで減るようです。 僕も拙作ムンホイを作りながらいろいろと苦労したところです) 「もういいや」でいい加減にやっているゲームが多いように思えます。

しかし、禁術〜は、魔法防御力を持つ「メダル」を実にうまく使っています。 最強の「幻のメダル」にいたっては、魔法防御力90、つまり丸腰のときの 10分の1のダメージになるわけです。こういったメダルの存在も考慮して、 敵の魔法攻撃もかなり強力ですが、まさにそこがエキサイティングです。
武器や防具の持つ攻撃力、守備力は、 ツクール系の普通のRPGだと、大体最強でも100がいいところなのですが (ツクールのエディタのデフォルトの値を見ると、最強の装備でも50だから)、 事実拙作「Moon Whistle」も250前後なんですが、このゲームは 1ランク上の装備になると値が100あがるという凄さ。終盤では僕の修次郎は 攻撃力400〜600の武器を装備していました。(なんか攻撃力1000の 武器とかあるらしいですが)
ツクール95の制約を最大限まで使って、 「経験値を稼ぐのが、武器防具を手に入れるのが、そして戦闘が楽しいRPG」を 作り上げたのは素晴らしいと思います。

ツクール作品の名作に多くいえることなのですが、「限られた制限の中で いかに面白い作品を作り上げるか」という点を極限まで突きつめた、という特性が この「禁術〜」にもあてはまると思います。
よって、たとえツクール95でなくても、「戦闘が楽しいRPG」を目指して いる人は是非ともこのゲームを勉強のためにプレーしてみるべきでしょう。

謎解きも面白い!

さて、ゲームバランスを絶賛しましたが、本当にこのゲーム、 ゲームバランスの凄さを楽しむのもよし、そこから何かを学ぶのもよし、 まさに最高です。
このゲームは、シナリオも謎めいた展開で、序盤は何のことやら分からず そのうち少しずつ「禁術」の存在を知り、巻き込まれていく、といった 割とありがちの話なのですが、異次元とかそういったトピックが かなり面白いです。とはいえ、このゲーム、家庭用ゲーム機の古きよき時代の スクウェア作品(ファイナルファンタジー2,3や「サ・ガ」シリーズ)に よく見られた、「アイテムを手に入れる」「強い魔法を手に入れる」 そういった楽しさを探求することに極限まで特化されている、そこに連動して 楽しめる話、これが凄いのです。

そして、そういったアイテムを手に入れるためには、様々なトラップを こなしたり、隠し通路を見つけたり、といった努力が必要になります。
…そう、トラップや隠し通路が凝っている というのが、いいのです。

シナリオ重視で、そういったトラップで足止めをくらうのはいや、と 考えている人が多いのか、最近のゲームではパズル的な要素っていうのはそれほど 多くない傾向にありますが、禁術〜では、相当にこのパズルに凝っています。
最近ではツクール2000が主流になっていますが、ツクール95はそれほど機能が 多くないため、「とりあえずシナリオ重視かな」となってしまうことが多かったように 思えます(当時はシステム重視のゲームを 目指した人はDante98IIで作っていたようですが)。 しかし、禁術〜では、そういった制限のなかで、最大限にそれを活かして トラップやパズルを作っていったのはいいと思います。
しかも、それが単なる「足止め」になっているのではなく、嬉しいアイテムが 手に入るので燃えます。いいですね、やはりこれでなきゃ。

難易度が高いが達成感も高い、まさに名作

以上より結論です。 シナリオ重視のゲームが好きな人には戦闘がさくさく進めるほうが好き、 という人が多いですが、 敵に何度も負けるとストレス、という人にはお勧め出来ないかもしれません。 でも、戦闘が燃えますので、やってみてください。というか、 RPGの戦闘が好きな全ての人にお勧めします。「今はツクール2000の時代だから」 などとおっしゃらずに、是非。きっと、ツクール2000の自作戦闘とはまた 違った「凄さ」を感じることでしょう。
どちらかというと「戦闘を楽しむRPG」なのでシナリオは抑え目に 感じるかもしれません。(サブキャラが織り成すイベントは結構必見ですが。) おそらく、禁術〜は、「ツクール95という限られた戦闘システムの上で ここまでバランスのよく、なおかつ楽しいものを作り上げた」という意味で、 後々まで名の残る作品になるでしょう。


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