発掘アドベンチャー

ジャンル:RPG(作者申告:ダンジョンアドベンチャー)
プラットフォーム:Win95/98/2000 (RPGツクール2000作品)
作者:鈴木太郎さん(現HN:Jさん)
種別:フリーソフト(コンテストパーク受賞作品)
ダウンロード先:コンテストパーク2000年6月度 受賞作品
入賞歴など:コンテストパーク2000年6月度銅賞(10,000円)
備考:バグのため、途中で止まってしまいます。 非公式パッチを作成しました→ 非公式パッチDL

ゲームの内容:女考古学者エリナは、助手のファインを連れて、財宝の発掘を目的に ダンジョンに潜入する。エリナは学術的な目的だというが、ファインはお金のためだろう、と エリナをからかう。実際エリナの本心はお金めあてだった。ダンジョンを探索していくうちに、 様々な人間と出会い、彼らと一緒に財宝を目指す…しかし彼らは仲間とはいえない、信頼が おけない面々。果たして財宝を手にしたとき、どうなるのだろうか。


ツクール2000初の入賞作品、そつのない作り

この「発掘アドベンチャー」、ツクール2000初の応募作品として話題になりました。 とりあえず全部サンプルグラフィックも作っているんですが、 これだけ早く応募してきて、とりあえずそれなりに遊べるわけです。 どんな感じだったのでしょうか。全体的に分析していってみましょう。

まず、戦闘のバランスはそこそこいいです。 ある意味、かなり楽であり、「シナリオを楽しむための戦闘」といった 位置付けであると感じられました。 欲を言えば、個人的には「ダンジョンの緊張感」が欲しいので、もっと バランスがきつくてもよかった、回復ポイントを使ってぎりぎり、くらいで よかったと考えています。

シナリオですが、これは後述しますが、終盤ではかなり興味深い展開になりました。 作者の自己申告ジャンルが「ダンジョンアドベンチャー」と、敢えて「アドベンチャー」と なっているのが分かるような気がしました。

ただ、気になったのは、謎解きがいささか単純であるということです。 特に、近くの看板に答えが書いてあるのはちょっといきすぎではないでしょうか。 前述のとおり、ダンジョンものというのはちょっとした難解な謎解きが欲しいところ です。もう少し考えさせる部分があってもよかったのではないでしょうか。たとえば、 暗証番号にしても、数字を4つ並べて書いておくのではなく、連立方程式を 解かせるとか、何らかのパズル的要素を入れておいたほうがよかったと思います。

あと、これは若干無茶な要求だと知りつつ書かせてもらうと、 罠のシステムについても「もうちょっと練りこみが欲しかった」と思っています。 罠は最初はアイテムがないと見えないので防ぐ手段がないのに、 後半では罠が見えるアイテムがあるので罠が全然問題ではなくなります。これにはちょっと疑問を 感じました。バランスが崩れているのです。
「風来のシレン」では、「1フロアだけ罠が見えるアイテム」があり、また、それが なくても「罠の前で素振りをすれば罠が見えるようになる」というのがあります。 つまり、どちらにしても絶対的な効果ではなく、なおかつ努力によって防ぐ手段があるのです。 こういった「ゲームとしてのお約束」を盛り込んでおけば、もっと面白い ダンジョンになったのでは?と思います。

とはいえ、プレーしていてストレスを感じることもないし、 数十分で軽くクリアできるので、僕としては及第点に達していると思います。 (さらに、後述の理由により、 このゲームは是非とも皆さんにプレーして欲しいです。)
それに、シナリオがちょっといい感じなのです。

お金持ちであることが必ずしも幸せではない

そう、このゲーム、そつがない作りですが、 ラストでこのゲームの主題がきちんと現れているのが評価の一つのポイントです。 終盤、突然これまでの流れとうってかわって、シリアス調になります。 財宝を手に入れたが、4人が財宝を狙っている。財宝はひとつしかない。 そこでプレイヤーの欲望と自分の中で闘うことになります… 詳しい話はネタバレになるので話せませんが、いろいろと考えさせます。

お金持ちになっても、こころが貧しかったら仕方がない、 しかし、大人になるとどうしてもお金に困って、結局追い詰められてしまう、 でも、そんなときこそ思いやりの心が大事だ、といったような主題。 まさに正論です。

かの有名な相田みつをの書では、

「かねが人生のすべてではないが
有れば便利、無いと不便です
便利のほうがいいなあ」
というのがあります。これは、彼が経済的に苦しいときに書かれたそうですが、 裏を返すと「お金があるのは便利だ、だけど、やはり幸せというのはお金では 置き換えられないんだなあ」と実感させてくれます。 正直なところ、お金は必要です。しかし今、裕福になって食べることに事欠かなくなって、 それでも「衣食足りて礼節を知る」という風に必ずしもならないのはどうしてなのでしょう。 それどころか皆さびしそうな顔をしているのはなぜ?…こんなことを、 僕も先の拙作を作りながらいろいろと考えたものです。
結局、衣食住をやっていくだけのお金は必要でしょう。でも、それ以上のものを 執拗に求めつづけ、権力に魅せられて欲望に駆られた人間の行く末は哀れです。 我々は、この作品が伝える 「思いやり」という概念をきちんと理解しつつ、「衣食足りて礼節を知る」 人間になっていけるように努力すべきでしょう。プレーしていて、思わずこんなことを 考えさせられました。

…というか正直なところ、このゲームでこういうシーンが最後に出てきて、 びっくりしました。かなりいい感じです。 終盤できちんとまとめているのは実によいと思いました。

コンテストパークを目指す皆さんへの練習問題

これまでにように、発掘アドベンチャーは、「一通り平均点は行っている」 作品です。逆にいうと、「これといってアピールポイントがなさそう」というようにも 解釈できそうです。しかし、僕はこのゲームは重要なゲームだと 思っているし、だから皆さんにプレーしてもらいたい。 なぜならこの作品が、コンテストパークで初めてのツクール2000応募作品(同時に 入賞作品)だからです。
つまり、かなり急ぎ足で作られたのだということが分かります。 それだけ短期間で、及第点の作品を作り上げたということは、 評価されるべきでしょう。

このゲームを推すもう一つの理由は「ツクール2000黎明期の入賞作」であるということです。 よって、コンテストパークに作品を応募しようと考えている人は、 まずこの作品をプレーして、自分の応募作品と比較してみてください。
ツクール2000が発売されてからかなりの時間が経ちました。 皆さんは、自分が制作中のゲームが果たしてこの作品よりどれだけ多くの アピールポイントを持つでしょうか?もしそれほど多くないとしたら、何を加えたら いいでしょうか? これを練習問題の第1問とします。各自考えてみてください。

また、前述のとおり、この作品は一通り平均点に達しています。逆にいうと、 「基準となる作品」として適しています。ゲームのアイディアを考えていく上で、 「自分ならどう改善するか」を提案することは、非常に重要です。
そこで、練習問題第2問は、 このゲームを皆さんだったらどの点が鼻について、 どのようにそれを改善すべきか、ということです。 このゲームを見て、作者さんもきっと「こういうところを改善すべきだった」と 反省すべきところがあるのだと思います。そして、今後「発掘アドベンチャー2(?)」を 作るときには、その点を考慮してくれるものだと思っています。
コンテストパークを目指す皆さんも、 このゲームをプレーしながら考えてみてください。あなたなら どこをどう改善しますか? そしてそれによってどのような点がよくなると思いますか? 過去の入賞作品を越えること。これこそが作者さんの次回作の 目標であるし、その他の皆さんの目標でもあると思います。

続編は「何度もやりたくなる」ゲームを目指して下さい!

それでは、僕はプレーしながらどのように感じたのか。 前述の練習問題の第2問に対する僕なりの解答、ということで読んでもらえたら 嬉しいです。

僕がダンジョン探索と聞いて思い出すのは、僕の大好きな 「不思議のダンジョン」シリーズです。ダンジョン探検もので、 特にシレンは廃人になるまでプレーしました。
また、「ウィザードリィ」も大好きです。「死と隣り合わせの灰と青春」という エッセイがありますが、まさにこの言葉に代表されるスリルと、キャラクターの 成長、アイテムの発見が楽しかったです。
これらのゲームに共通するのは、「シナリオよりもむしろシステム重視である」という 点です。ダンジョンをベースにする以上、やはりシナリオよりも「緊張感」とか 「アイテム発見の楽しさ」とか、そういった方を進化させていくと いいと思うんです。(シナリオがベースでもいいんですが、 その場合はダンジョンの中だけだとなかなか難しいので、 ダンジョン以外も舞台にするのがいいかな、とか思ったりしております)

僕がこのゲームを引き合いに出したのは、発掘アドベンチャーの一つ残念な点として、 普通のゲーム等と同様「一度プレーしたら二度プレーする気にならない」という 点が挙げられます。
これは、敵の出現法則もアイテムも、全てが固定されているからに他なりません。 一方、ダンジョンゲームは「時の運」によって、様々な要素が絡んできて、プレーするたびに 様々な変化があるため面白く、またスリルを感じるものなのです。
よって、プレーするたびに前と違った「変化」が感じられる 自由度があるといいと思うのです。 …もちろんさすがに不思議のダンジョンまで目指すのは難しいでしょう。さすがに 僕だって、「じゃあお前シレン風のゲームをツクール2000で作れるのかよ」と いわれたら無理だと答えます。
でも、「もう一度やりたい」と思わせる 作品にするのならば、それほど難しくないやり方で、いろいろと方法があると思うんです。
たとえば、シナリオの分岐とかダンジョンマップの分岐とか、様々なトラップを こなすこと(うまいヒントがあって、上達すると抜けやすくなる、あるいはいいアイテムを 手に入れるために難しいトラップがある)、低確率で見つかる隠しアイテムを入れておくこと、 などなどです。 さらに隠しマップを入れたり、敵が低確率でアイテムを落としていったり、 さらには遭遇する敵をランダムにしたり(時にはかなり強い敵にも出会う、でも見返りも 大きい)、といった風にすることによって、 もっと「ゲーム性」を上げることが出来ると思います。 そうすれば、プレイヤーも「今度はよりよくプレーしてやろう」と何度もプレーすることになると 思うのです。そうなれば皆、この作品を名作だと認めることでしょう。
また、そういうアイテムを手に入れておかないと倒せない敵を用意して (勿論、倒さないルートもある)、倒せたら別の分岐が開ける、など、 そういった展開を用意する、といった手もあります。
これらのうち、いくつかを盛り込めば(全てを盛り込めたらもっと凄いけど) ツクール2000でも、工夫次第で1000回とまではいかずとも100回遊べる ダンジョンは作れると思います。

作者さんはこの作品ではきっと「一番乗り」を目指されたことだと思います。 そして、見事それを成し遂げました。これは、意義のあることだと思いますし、 作者さんは胸を張っていいと思います。 今度は、そういった時間の制約はないと思いますので、 じっくり時間をかけて、 自分の納得のいく次回作を作り上げて欲しいと思います。 是非とも頑張って凄い作品を創り出してください。


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