Blue Earth

ジャンル:アクションRPG
プラットフォーム:Win95/98 (RPGツクール95作品)
作者:Moonsideさん
種別:コンテストパーク入賞作品(フリーソフト)
入賞歴など:コンテストパーク2000年3月度銅賞(10,000円)

ゲームの内容:奇妙な夢に導かれて「ウィンドフォース」に やってきた3人の少年少女。そこは魔物達や狂暴化した動物達の温床と なってしまっていた。3人は冒険を続けていくうちに、動物達が 狂暴化したのは、人間達が大気を汚してしまったからであるという事実を 知るのである・・・・。
攻撃から、街の中の移動、キャンプなどにわたって目新しいシステムが 満載で、状況に応じてメンバーを使い分けるなど戦略性も高い。 通称、「RPGツクール95最強最後のA-RPG」。


レビューではなくドキュメント風にいきます

まず最初にお断りしておきます。このゲームをプレーした方ならご存知だと思いますが、 僕はこのゲームに少しだけ関わっています。オープニングで僕の名前が 「テストプレイヤー」として出てくるのですが、僕はそれほど大したことは していないのに、こんなに大きな名前で書いてくれていいのかなあ、なんて 赤面していたりもしますが、同時に作者ムーンサイド氏の人情を感じました。

閑話休題、そういう理由で、「レビュー」という客観的な立場でこのゲームを 語ることは出来ないのですが、このゲームは僕が 皆さんに伝えたいことがたくさんあるから是非とも取り上げたくて書いています。
そういうわけで、この文章は、僕とムーンサイド氏とブルーアースを取り囲む一連の 思い出を中心としたドキュメント形式で語りたいと 思います。

アマチュアゲーム界のエネミーゼロ

僕にとって、ブルーアースは一言で言うと「アマチュアゲーム界のエネミーゼロ」です。 それは、「作者の情熱」「賛否両論」という大きな二本軸が、まさにこのゲームと一致しているからです。

「エネミー・ゼロ」とは、最初はプレイステーションで出る予定でした。しかし制作者の 飯野賢治がソニーのやり方に不満を感じて、 開発がかなり進んでいた段階にも関わらず、突然「エネミーゼロ、セガサターンへ!」と前代未聞の鞍替えをしたことにより 大騒ぎになったのです。(それも96年3月27日、プレイステーションエキスポの最中で、です!・・・・このあたりの 事情をより詳しく知りたい方は、飯野賢治の自叙伝「ゲーム 〜The super 27 years life〜 」あたりを読んでみてください。)

この行動も「ソニーに対して疑問を投げかけるとは流石」「言いたい事はわかるけど やりかたが悪い」など賛否両論があったのですが、彼らが気合を入れて作りあげて 完成させたゲーム、こちらの方も見事に賛否両論分かれました。

そもそも、飯野賢治は中卒にもかかわらず19歳で会社をおこし、現在スーパーワープ (当時ワープ)の社長、という、かなりの経歴を持ち、「ゲーム業界の風雲児」と呼ばれ、 一時は様々な方面で話題になっていた人物なのですが、とにかく凄いバイタリティの持ち主で、前述のような行動によって 賛否両論、好き嫌いがはっきり分かれたクリエイターの一人でした。

そんな彼が、情熱を込めて世に送り出した作品「エネミー・ゼロ」と、 僕の中でオーバーラップしているのがこの「ブルーアース」なのです。

作品にかける労力と情熱

この「ブルーアース」の中で、一番プッシュしたいのは、「作者の作品にかけた労力と情熱」 でしょう。このゲーム、プレーしていて作者のオーラが伝わってくる作品です。なんっていうか、いい意味での「衝撃」、 そんな感じです。
このゲームは、全てのグラフィック、 音楽がオリジナルで、独特の世界観をかもし出しており、一見の価値ありです!
しかも、昔のパソコンのRPGを思わせるような演出をツクール95で作り出しており、 それ以外にも様々な演出の凄さを感じさせてくれます。 僕は作者とメールのやり取りをしていたとき、彼はザナドゥ、イース、ハイドライドなどの アクションRPGのことを話してくれていましたが、それをツクール95で実現した、という 作者のアクションRPGに向けた情熱が強く 感じられます。
それゆえにこのゲームは昔のPCゲームのバランスがかなり忠実に再現されています。 最初はきついと感じ、後述のように賛否両論ありますが、アクションが苦手な僕でも、レベル上げて頑張ればクリアできた(一部ツクール95の エディタ立ち上げて覗いていましたが)ので、アクションRPGになれている人や 昔のゲームを楽しんできた人にとっては、丁度いい手応えになっているのでは ないでしょうか。

そして作者のこのゲームにかけた労力は、制作に1年以上かけているということからも読み取れます。最近のコンテストパークの 受賞作品を調べてみましたが、1ヶ月や3ヶ月、長くても半年程度で完成させているのが 殆どです。2000年上半期の受賞作で1年かけていたのは、 この作品だけなのです。

とはいえ、この情熱や労力は、こうやって文字にしてもなかなか伝わりにくいと思うので、 まだの方は是非プレーして、演出や世界観やシステムの凄さを味わって欲しいと思います。

賛否両論は「魅力」の裏返し

さて、この「ブルーアース」ですが、3月にコンテストパークにノミネートされました。 3月は良質のゲームが多くノミネートされており、またプレイする側にとっても 暇が出来るとき、ほっと一息つきたいとき、ということもあってか、多くの人が プレーしました。
すぐに多くの掲示板でレビューや感想が書かれました。しかし、 「システム的に凝っていて凄い」「ツクール95でここまでやるとは!」といった意見 がある一方、批判的なことを書く人もいました。 それでも全体的に見ると、 「批判的なことを書くより 肯定的なことを書いた人の方が多かったんじゃないか」という気がします。
ひょっとして、これを読んで貴方は「肯定的な人が多くても、否定的な意見が多いようだったら、 相殺されて結局あまりいいゲームってことにはならないんじゃないか」と考えているかも しれません。しかし、それはあてはまらないと思います。

なぜなら、僕はこれらの批判はブルーアースに本質的な 魅力があったからこそ、その裏返しとして出てきたものではないかと感じるのです。
その論拠として、ブルーアースの批判には、「生産的な批判」が多かったように感じられることが挙げられます。
普通のつまらないゲームなら、「つまらなかった」とか 「すぐやめた」といった類の、「取りつくしまもない批判」が多く見うけられます。 一方で生産的な批判が多いゲームには、それだけプレイヤーが 魅力を感じて長いことプレーしていたからこそ、でありその魅力を感じることが出来ます。
すなわち、彼らが批判をしたのは、ブルーアースがつまらないから、ではなく、 ブルーアースに魅力を感じつつ、いくつかの残念な点が鼻についたから、 と解釈すべきでしょう。(彼らは「シナリオが分からない」「一部難しすぎる謎が ある」といった点を指摘していました。)
とはいえ、その「残念な点」があったとしてもブルーアースの魅力はそれに勝るものがあります。 いろいろといわれながらも、しっかりと 銅賞に入賞したという事実がまさにその証明 といえるでしょう。

そして「エネミー・ゼロ」も賛否両論飛び出し、喧喧諤諤の議論が交わされたゲームです。 前述の鞍替え事件が話題性を呼び、60万本も売れたのですが、「感動しました」 「グラフィックが凄い」「音楽が凄い」といった賞賛の裏で、「シナリオが矛盾だらけ」 「難しすぎてすぐ死ぬ」などの批判の声が飛びました。
ここで「ブルーアース」がフリーソフトであるのと比べると「エネミー・ゼロ」は 売り物なのだし、プレイヤーの非難も甘受せざるをえないのでしょう。 (その後ベストで出た時には難易度を低くしたモードが 付いていたようです。)
それでもこのゲームを賞賛した人は結構多いのは事実だし、 「絶賛は出来ないけど支持したい」という態度を示す人も含めると、かなり多いこのゲーム。 ブルーアースもこういった感じなのではないでしょうか。

批評する価値のない作品が賛否両論になるようなことは決してありません。
賛否両論になるというのは、とりもなおさず「その作品が批評する価値がある」と 皆が認めたということと同じです。
ましてや、「賛」の方が多い作品においては、なおさらです。

批判をした人がいても、よさを認めてくれた人は、きちんとそこを見ています。

心に残る作品

皆さんにとって、「心に残る作品」にはどのようなものがあるでしょうか。 僕にとって、このブルーアースも、強く心に残っています。
それは、「ゲームが難しすぎる」といった批判や、それに対する「そんなことはない、 昔のゲームを意識しているのだからこれでいい」という弁護、「賛否両論あるのは 当たり前、むしろいいゲームほど賛否両論」といった意見、 そして「どうせ入賞しない」という発表前の作者のあきらめと、「喜びは突然に」と 連絡がきた時の作者の喜び、その後の「入賞してよかったですね」と、 心配してくれた人達からの書きこみ。
掲示板に書きこまれた数々のなりゆきを見守っていた僕にとって、 この作品を通して、「本来ゲームとは 何だったのか」と考えさせてくれたこと、様々な人間模様を見せて もらったことは本当にいい経験になりました。

最後に、作者のムーンサイドさんによると、現在彼は「修正版」を制作中なのだそうです。 僕が「数少ない残念なところ」だと指摘した、ゲームバランスやシナリオまわりが 改良されることになりそうです。
修正版が完成した暁には、暇の有る方は是非プレーしてみましょう。特に、 現行バージョンをプレーして批判をしていた人には是非ともプレーして、再評価を してほしい、と1レビュワーの僕からもお願いしておきます。
弱冠12歳(当時)にしてこれだけの大作を作り上げた「早過ぎる天才」、ムーンサイドさんの 今後の活動に幸福あれ。


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